【球面】
腕時計の基本造形のひとつ。
印象的な光の表情と、
奥行きのある映り込みや
豊かな陰影によって、
高級感と立体感を際立たせる
重要な構成要素である。
石原 悠 いしはら ゆう
2003年、セイコーインスツル入社。現在はセイコーウオッチに所属し、デザインディレクターとして、グランドセイコーやクレドールなどのアドバンスモデルの開発・デザインを担当。
私にとって「球面」とは。
その名の通り球面とは、球の表面のことです。歪みのない完璧な弧を描きます。腕時計では、ケースの上面やダイヤルを覆うガラスにこの形状が採用されることが多いですね。球面って言ってしまえば、周囲の光と空間を反映する「究極の鏡」だと思うんです。
球面が捉えた風景に、
心を捉えられて。
球面のものは、街中でも意外と目にします。例えば、カーブミラーとか、クラシックカーのヘッドライトとか。そこに映り込む世界の美しさには、いつもハッとさせられます。私がこの造形にこだわるのは、何気ない風景が球面状に映し出されたとき、そこに言葉にできない不思議な魅力を感じるからなのかもしれません。
過去に私がデザインした腕時計にも、球面を用いたものがあります。覗き込むとやはり周囲の光と空間が静かに映り込み、つい時間を忘れて見入ってしまいます。今回は、この「究極の鏡」がもたらす感動を増幅したいと考え、美しさに振り切ったデザインに踏み込みました。
すべては、
美しい面のために。
ガラス、ベゼル、ケース、外胴(りゅうずガード)の4層すべてを同じ曲率で揃えることで、ウオッチ全体で球面をつくりあげることに成功しました。各パーツが同一球面で連なる美しさにご注目ください。もちろん、そこに映し出される世界の美しさにも。
裏面も表面と同様の球面構成。小型の機械式ムーブメントが確認できる。多くの時計に存在する「りゅうず」の出っ張りも、バンドを取り付けるための「かん足」も無い。それは、ひたすらに美しい面を愛でるための腕時計であることを物語る。
りゅうずを真中心にレイアウトすることで、横から見たときの形状が完全なシンメトリーに。美しいバランスへのこだわりが感じられる。
デザインは2種類。全てを鏡面で仕上げたものと、異なる3種の仕上げ(鏡面・円周筋目・放射筋目)で構成したもの。「仕上げの違いで異なる表情が感じられると思います。ぜひ会場で実物を見比べて、それぞれの魅力を感じていただきたいです」(石原)